身元がバレない程度に、適度に。


田舎町に生まれ、DV父親と泣き虫の母親の間に生まれる。
子供のころは、ただ妹をDV父親から守って生きる事だけを考えて生きていた。

勉強、態度、家事。なににつけ、父親は私を罵りなじった。
それでも私が家出をしたり自暴自棄に走らなかったのは、妹がいてくれたから。
妹は集中攻撃を受ける私にいつも優しく接してくれた。
泣いてばかりいる母親以外で、妹だけが私の救いだった。


私は高校を出て、そのまま就職した。
初めは実家から通っていたが、妹の大学進学を期に、
貯めていた貯金で妹と一緒に一人暮らしを始めた。
父は妹は可愛がっていたので、妹の学費だけは出してくれた。

妹は今、大学で必死に語学を学んでいる。
できの悪い私とは違って、非常に頭がよく、
私が好きなレディ・ガガの曲を一緒に聞きながら、歌詞を翻訳してくれたりする。
時々海外ニュースも、私に読んで聞かせてくれる。本当にできた妹。



私はとある企業の事務員として働いていた。
女の同期はいなかったけれど、お局様もいる、優しい先輩もいる、楽しい男の同期もいる、
割と働きやすい職場だった。
だけど。


……この続きは、まだ、書きたくない。



とにかく、私はある事件に巻き込まれて職を失った。
そして転職先を必死で探したが、このご時世。
半年、仕事が見つからなかった。


貯金はもう底を尽きた。
でも、妹に今以上アルバイトをさせるわけにはいかない。
妹は学業に専念させて、立派な人にさせなければという、姉としての矜持がある。
だから私は、妹に嘘をついた。

「お姉ちゃん、明日からスナックで働く事にしたよ。」

妹は非常に困惑していたが、最終的には同意した。
そして、私に泣きついて、
「なんでお姉ちゃんばっかり辛い目に遭わなきゃいけないの」
って言ってくれた。
私は妹の涙だけで、十分だった。


そして私は、風俗嬢になる道を選んだ。
妹を食べさせる為。私が食べる為。
次の仕事を探す時間を持ちながらできる、簡単で高収入のお仕事。

ありがたい事に、今まで嫌なお客様に遭った事はない。
初めてのお客様の時も、すんなりとお客様と接することができた。
多分、そういう本能を、持っていたんだろう。


そして私は、今夜もお客様のお相手をする。
いらっしゃいませこんばんは。
ひとときの夢を、どうぞ。

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